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innovation PR/FAQ アマゾン 新規事業 谷敏行

アマゾン PR/FAQ その1

アマゾンでは新たなイノベーションを社内で提案する際にはPR/FAQというフォーマットが必ず使われます。皆さまが体験されているアマゾンの新商品や新サービスは全てこのPR/FAQから始まっています。私もアマゾン在職中には2つの新サービスのPR/FAQを使って提案して、それを実現させた経験があります。

PRはプレスリリースの略です。新製品や新サービスが市場導入される際にその商品やサービスについての機能、値段、使用利点、これまでの商品やサービスとの違いなどについてのリリース文章が発売開始した会社からマスメディアや自社のウエブサイト上でリリースされるのは日常よく目にされると思います。アマゾンではこれから開発する商品やサービスをあたかも市場導入したかと仮定して数年先の未来のプレスリリースを書くのです。新規イノベーションを提案する日付が2021年5月1日でその新サービスや商品の市場導入を3年後に想定しているなら、2024年5月1日の日付でプレスリリースを書きます。FAQはFrequently Asked Questionsの略で想定質問・回答集という意味になります。

アマゾンではWorking Bacwardsといって技術や製品を出発点とした視点ではなく顧客を出発点とした視点で新たなイノベーションを生み出します。PR/FAQを使ってイノベーションのアイデアをまとめることによって、顧客中心に考えているかを明白にすることができます。売上や利益成長を実現するというのは結果であって出発点は顧客が必要とするものを自分たちがどうすれば提供できるかということから常に考えます。これは多くの方々は当たり前な事だと言われると思いますが、企業の中でその当たり前な事を全社員が仕組みとして実現・体現していくのは難しいのです。

PR/FAQを使ってイノベーションの提案をすることにより、顧客はだれなのか?本当にターゲットとする顧客が喜ぶのか?その市場は自社が他社よりも良いサービス・商品を提供出来るのか?何を創り上げればいいのか?について顧客視点で整理し、率直な意見交換をすることが出来ます。そのフィードバックを元にPR/FAQを改良して仕上げていきます。その過程で本当に顧客が必要とするものは何でそれを本当に必要とする顧客が多くいるかどうか?というのが研ぎ澄まされていき、最終的にはマネジメントチームに提案し、そのイノベーションのアイデアに投資して推進していくかどうかが判断されます。投資が承認されたPR/FAQもそれで完成という訳ではありません。イノベーションを生み出す際に商品やサービスの試作などの過程をとうして初めめの仮説と異なっているようなことが発見されることは多々あります。仕様をこのように修正すればもっと顧客が喜ぶものができるのではないか。想定していた顧客層というのが少し良く理解出来ていなかったので、ターゲット顧客を修正する必要が出てくる。というようなことが頻繁にあります。そのような場合にPR/FAQにもどって修正し進化させていきます。

アマゾンで利益の稼ぎ頭となっているAWSのPR/FAQもAndy Jassyが書き上げ何度も修正を重ねて最終的に投資が認められ今のような大きな事業にまで成長させています。Andy JassyはJeff BezosがCEOを退任後の時期CEOに指名されている人です。次回のブログではPR/FAQの書き方について紹介します。